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  • 執筆者の写真一宇ichiu

06ー事例1

では、「辛いこと苦しいことは沢山あったけども、素晴らしいことしか起きていなかった。全ては『〇』だった。」という本当の意味に気づかれた、クライアントさんの体験を紹介いたします。

その前に、前置きがあります。

前世の記憶を呼び起こすと、何百年も前の出来事ですから、悲惨な場面や残忍な場面も出てきます。そうすると、中には「前世の事を思い出すことで、逆にそれがトラウマになるのではないか。」と言われる方もいらっしゃいます。しかし、今までの私の沢山の経験でいうと、トラウマになることはないようです。逆に、今まで自分を苦しめていた罪悪感や、自責の念や恐怖心が消えていきますので、とても楽になります。

前世の出来事を、思い出そうが思い出すまいが、その出来事によって作り上げた、思考パターンや罪悪感や恐怖心に、たった今も支配されているのが事実です。その原因が明らかになり解消していきますので、とてもすっきりしていきます。ネガティブな循環から解放されます。

例えは悪いですが、あなたの中にごみ箱があって、そのゴミを見たくないものですから、きちんと蓋をしてあるのですが、ずっと臭いが部屋に充満して気になっている、という状態なのです。ならばいっそのこと、ごみ箱の蓋を開けてお掃除をしてみることです。奥底に隠した、ごみ箱そのものを捨てることも可能になります

そして、さらにその奥には、何事にも代えがたい宝物が隠れています。時には、神そのものの自分と対面することも可能なのです

では、最初の事例をご紹介させていただきます。仮に田中さんとします。彼女は、三八歳で三人のお子さんのお母さんです。彼女は、子供に対する対応に悩み、自分を責め続けていました。

彼女が言うには「最近、子供にきつくあたってしまい、ひどく怒鳴りつけたりしてしまうんです。手が出そうになる時もあるんですが、それはどうにか押さえています。でもこのままいくと、押さえ続ける自信がありません。暴力も振うようになるのではないかと心配なんです。

そんな状況ですから、子供達は私に気を使って、オドオドと顔色を窺うようになってしまって…。優しくしなくっちゃと思いながらも、ついイライラしてしまう自分をどうにかしたいんです。」というご相談でセッションにいらっしゃいました。

カウンセリングを進めるうち、彼女自身が子供のころにひどい虐待を受けていたことを、涙ながらに話し始めました。彼女も彼女のお母さんから、その時の気分で殴られたり、食事を与えられなかったり、時には車で山に連れて行かれて置き去りにされたり…。さらには「あんたなんか産まなければよかった!」と事あるごとに言われていたのでした。

「とにかく、お母さんの怒りのスイッチがどこにあるかわからないんです。」と悔しそうに言われます。「いきなり怒鳴り始めるんです。そして真冬でも庭に出されて、布団叩きやほうきで叩かれて、朝まで放置されるのです。それが高校卒業して家を出るまで続きました。


あるいは、夜寝ているといきなり叩き起こされて、怒鳴り始めるのです。とにかく意味が分かんないんです。

そして、階段に正座をさせられます。しかも一番上ではなくて三段目位に。さらに内向きではなくて外向きに正座をさせられるんです。内向きだと上の段に手をついて、少しでも休めるから。それすらできないように、外向きに正座をさせるんです。それが登校時間が来るまで続きます。


食事を抜かれることもしょっちゅうです。反発でもしようものなら、三倍になって返ってくるから、従わざるをえないんです。だから、お母さんのことが許せないんです。殺してやりたいくらいです。」と悔しそうに言われます。

当然、彼女はお母さんを恨みました。


そんな母親に対して「その時の思いを母に訴えても、あの時は仕方なかったとか、あなたがあんなことをするからとか、そんなことしか言わないんです。絶対に謝ってくれないんです。一言でも本心で謝ってくれたら、少しは違うと思うんですが…。」と涙をこらえながら訴えられます。


さらに、「でも、あんなお母さんなんか、今まで絶対に許したくないと思ってきましたが、自分も同じようなことを子供たちにするようになってしまって。母に対する怒りが子供に向いているんだということに、自分でも気づき始めました。母を許さなくちゃと思うんですが、どうしても出来ないんです。結婚して実家から車で一〇分くらいの所に住んでいるんですが、母と会うとイライラするものですから、盆と正月くらいにしか帰らないようにしてるんです。


父も七年前に亡くなり、母も年をとって一人暮らしで寂しそうなんです。体調も思わしくないようですから、昔の事は忘れて優しくしなくっちゃと思うんですが、どうしても出来ないんです。」と絞り出すように話してくれました。


彼女も子供の頃からひどい虐待を受け、悲しみと寂しさと、怒りが心の奥底にこびりついていたのです。そのこびりついていた感情が、子供たちに向いていたのです。いわゆる虐待の連鎖が起きかけていたのでした。


「本当に辛かったね。悔しかったろう。恨んでも仕方ないよね。」と声をかけると、「はい」と苦しそうに涙を流されます。


「しかし、なぜあなたはそういうお母さんを選んで生まれてきたんだろうね?」と私が言うと、「私は選んだ覚えはありません! 子供が親を選ぶと本に書いてあるのは読んだことはあります。しかし、それは私には当てはまりません! もし選んだとしても、間違いました!」と言い張るのです。


「認めたくないよね。しかしね、間違うという事は絶対にありえないからね。あなたが今のお母さんを選ぼうと思った、原因となってる人生と向き合おう。」と私がいうと、彼女も覚悟が決まったようでした。


さらにセッションを進め、彼女を催眠状態に誘導し、前世の記憶を蘇らせていくと、原因となっている人生が明らかになってきました。


彼女は中世のヨーロッパのある宮殿のお姫様でした。一人娘なものですから、とてもわがまま放題に育てられ、使用人に対してとても傲慢に接していたのです。気に入らないことがあると、罵倒したり、せっかんをしたり、平気でひどいことをしていました。わがままな彼女は気にも留めていませんでした。


そんな彼女も年頃になり、親の勧めで結婚はしたものの、そんな性格ですから嫁ぎ先でも同じようなことをやってしまいます。当然、結婚生活もうまくいかず、離婚し実家に帰ってきたのです。そうすると、さらにわがままに拍車がかかり、せっかんを通り越して、家来に命じて拷問をしたり、監禁して餓死させたりと、どんどんエスカレートしていったのです。

そうやって8人くらいのメイドさんを死なせてしまったのです。しかし彼女は、そんなことになっても気にも留めていません。もちろん使用人はどんどんいなくなりました。


しかし、まだご両親が健在な内は、どうにかなっていたようですが、当然ご両親も先に亡くなり、自分が後を継ぐことになった時には、全ての使用人が出て行ってしまったのです。一人ぼっちになってしまった彼女は、料理はもちろん、身の回りのことも何もできません。そのみじめな姿を見かねて、一人のメイドさんが戻って来てくれました。


そんな彼女も年をとるにしたがい、今までの自分の言動に気付き始めました。「何て傲慢で、わがままな自分だったんだろう。みんなに本当にひどいことをしてしまった。こんな自分が、みじめで寂しい老後を送らなくてはいけないのも仕方ない。自業自得よね…。」

そして、彼女は亡くなるときに「次は、人の痛みがわかるもっと優しい自分にならなくちゃ…」。そう思いながら、五〇歳の若さで、最後まで残ってくれたメイドさんに見守られながら死を迎えたのです。

彼女は前世の場面を思い出しながら、ずっと泣き続けていました。


彼女の壮絶な前世が明らかになった後、さらに彼女を「今のお母さんのお腹の中に入る前、今回の人生の計画を立てている場面(中間生)」へと誘導しました。

彼女に「あなたはそこで、次の人生どうしようと思ってる?」と聞くと、「人の痛みがわかる優しい自分にならなくてはいけないと思っています。」と答えます。


さらに「ではあなたは、なぜ今のお母さんを選んだの?」と聞くと、彼女は号泣しはじめ、しばらく言葉になりません。そして、途切れ途切れに「とても優しい人だからです…」というのです。

私が「優しくないでしょ。あなたにあんなひどいことをしたお母さん、優しくはないでしょう。」というと、彼女はさらに号泣しながら「優しいんです! 優しいんです! とても優しい人なんです。」と訴えるのです。

さらに私は「その優しいお母さんに、あなたは何かお願いしなかった?」と聞くと、「お願いしました。私に痛みを教えてとお願いをしました…」と言います。


私 「あなたがお願いしたんだね。」

田中「はい。」(涙)


私 「お願いされたお母さんは、何と言ってたの?」

田中「あなたのお母さんになることはいい。しかし、あなたにそんなひどいことをすることだけは勘弁して、と何度も断られました。」


私 「断られて、あなたはどうしたの?」

田中「私も何度もお願いしました。こんなお願いができるのは、あなたしかいないから。あんなダメな自分には戻りたくないから。どうかお願いだから、私に厳しくしてって。私がメイドさん達にしたことと同じことをしてって、何度もお願いしました。」(号泣)


私 「その時のお母さんはどんな気持ちだったんだろう。どんな表情をしてた?」

田中「とてもつらそうな表情をしてました。」

私 「本当は、お母さんはあなたにどう接したかったんだろう。」

田中「もっと優しくしたいと思っていたと思います。」


私 「そうだよね。その方がお母さんだって穏やかな人生が送れた。」

田中「はい。」(号泣)


私 「お母さんも辛かっただろうね。そのお母さんに何て言いたい?」

田中「本当にごめんなさい。辛い役目をお願いして本当にごめんなさい(泣)」


私 「そして、あなたの願いを聞いてくれたことに対しては何て言いたい?」

田中「ありがとう。本当にありがとう。ありがとう。(号泣)」


さらに「そのお願いをしたお母さんは、前世の誰なの?」と私が訊くと、「最後に残ってくれたメイドさんです…。こんなお願いができるのは、あなたしかいないからって、お願いしました。」と更に泣きじゃくります。


「本当にごめんなさい。本当にごめんなさい。」と何度も何度も謝るのです。

そうなのです。彼女は今回生まれてくるときに、前世で自分を看取ってくれたメイドさんを、お母さんに選んだのです。自分のわがままを最後まで聞いてくれた、前世の使用人だった人を。この人なら私の真の願いを聞いてくれると思って、文字通り一生のお願いをして生まれてきたのでした。彼女は「もう前世のような失敗はしたくないから、人の痛みが分かる優しい自分になりたいから。」と、お母さんにお願いをしていたのでした。


そのことに気づいた瞬間、全てが「ありがとう」に変わったのでした。苦しいこと辛いことは沢山あったけど、実は素晴らしいことしか起きていなかった。自らの人生をかけたお母さんの深い愛に、ずっと包まれていたことに気づいたのです。これが彼女とお母さんの、魂レベルの思考であり、契約だったのです。


その三日後のことです。彼女から電話がかかってきました。

「あの日、セッションが終わって、実家に直行したんです。」彼女の実家が、セッションルームの近くだったんです。

さらに、「お母さんの顔を見た瞬間、産んでくれてありがとうと、思わず言ってしまいました。言った瞬間、涙が溢れてそれ以上何も言えなくなってしまいました。それを見ていた母は、オロオロしながら、何かあったの?と言ってたようですが、しばらくして母も泣きながら、今まで本当にごめんね、と本心で謝ってくれたんです。」と電話口で泣いていました。ここまでいくと、人生が一八〇度変わりそうですよね。

彼女は今までの体験の本当の意味に気づくことができたのです。彼女のお母さんは、自分の人生をかけて、彼女の魂レベルの望みを聞いてくれていたのです。

彼女はそのことを思い出したのです。そして、彼女とお母さんの間にあった魂の契約はすべて成就して、解約されたのです。自らに課した課題を手放すことができました。二人は、本来の素晴らしい関係に戻っていったのです。

その後お子さんたちにも怒鳴ることがなくなり、子供らしい表情にもどられたそうです。

どうですか? 実は物事って、こういうふうにして起きているのです。確かに、つらい苦しいことは沢山あったけど、悪いことが起きていたわけではないのです。

すべては「私がなりたい私になるために、私が望んだすばらしい出来事」だったのです。そして、あなたの周りの沢山の大切な人たちが、あなたの素晴らしい望みをかなえるために、人生をかけてお手伝いをしてくれていたのです。その本当の意味に、気付いていない自分がいただけのことなのです。全てが「〇」だったのです。

ここで誤解をして欲しくないのですが、自分が望んだことだから、虐めや虐待を受け続けても仕方ないと言っているわけではありません。時には逃げることも必要です。


しかし、辛い状況の中にいる本当の原因に気づくことで、根本的な解決に至ることができるのです。状況自体が変わるのです。

本当の意味に気づき、自分を許すことで、それが可能になります。人生の流れが変わり始めます。

この本を読み進める内に、その意味がお分かりいただけると思います。

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