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執筆者の写真一宇ichiu

強い自己否定に悩まされていた女性

では、ここでもう一つ事例を紹介させていただきます。強い自己否定に悩まされていた方の事例です。


川口さん(仮名)三八歳女性の場合です。

セッションが始まり、「今日は、何をご相談にいらっしゃいましたか?」とお聞きすると、彼女は「いつも自信がないんです。結婚して主人の実家に同居してるんですが、いつもお義母さんの目が気になって、気が落ち着く時がないんです。お義母さんと仲が悪いわけではないですが、ちょっとした嫌みを言われたりもします。

そうすると、とても落ち込んで自分が最低の人間のような気がするのです。そうやって、いつもオドオドしているんです。」と自信なさげに言われます。

確かに、彼女と普通にお話をしていても、何かにつけて「すみません」と言われます。「すみません」が口癖のようです。


「子供の頃はどうでしたか? お友達とは仲良くできていましたか?」聞くと、「思い起こしてみれば、子供の頃から周りに気を使ってたみたいです。自分の意見は言わずに、常に相手に合わせようとしていました。ちょっと強い口調で言われたりすると、何か叱られてるようで、ビクビクしてしまうんです。」

「どうもそんな感じみたいですね。すみませんが口癖みたいですものね。」

「主人からも言われるんです。謝らなくてもいいことに、いつも謝っていると…。」

「そうみたいですね。周りから否定されると思うと、どんな気持ちになりますか?」

「とても怖いです。存在そのものを否定されそうな気がします。」

彼女の言葉の端はしに、強い罪悪感と自己否定が透けて見えます。ですから、周りから認めてもらうなり、許してもらう必要があるのでしょう。○が必要なのです。少なくとも×をつけられてはいけないのです。×をつけられるということは、彼女の存在そのものを全否定されそうなことなのです。ですから彼女は、周りから○をもらうことだけに専念をして、どんなことでも受け入れて、自分の気持ちや考えを押し殺さなくてはいけないと思っているようです。

彼女ほど強くはないにしろ、そのような感覚を持ってらっしゃる方は沢山いらっしゃいます。

そこで、彼女がなぜそのように思いこんでしまったのか、原因となっている前世へと誘導しました。

二百年ほど前の東南アジアの人生が出てきました。彼女はその人生では男性で、漁師をやっていました。

ある日、いつものように友人と二人で小舟で漁に出掛けたのですが、突然の嵐に遭遇し、船は転覆して沖まで流されてしまいました。やっとの思いで、無人島に泳ぎ着いたのですが、自分たちがどこにいるのかさえもわかりません。食料もなく、何日もするうちに友人は餓死してしまいました。当然彼女も餓死寸前です。その極限状態の中で、彼女は友人の遺体を食べてしまったのです。そうすることで、やっと生き延びることができたのです。


その数日後、沖合を通りかかった船に助けられ、彼女は村に戻ることができました。

家族や村人たちは、生還したことをとても喜んでくれるのですが、自分がどのようにして生き残ったのか、誰にも言えません。友人の安否を聞かれても「わからない」と言うしかないのです。


本当のことを言えるはずがありません。ましてや、友人の遺族に合わせる顔などありません。申しわけなくて申しわけなくて仕方ないのです。加えて、いつかはそのことがバレそうで、神様から罰せられそうで、怖くて怖くて仕方ないのです。


彼女はその罪悪感と恐怖心の中で、毎日をオドオドとして「すみません」を口癖のようにして、暮らしていたのでした。しかし、いくら謝っても本当のことを言えませんから、謝罪しきれないのです。

「そのときの友人は今のだれだかわかりますか?」と聞くと、彼女は「今の夫です」号泣しながら言います。実は前世の友人が今のご主人だったのです。さらに、その遺族が嫁ぎ先の家族だったのです。ですから、肩身が狭い思いをして当然だったのです。彼女の涙が止まりません。


ではなぜ彼女は、前世の友人の家族のところに嫁いできたのでしょう。全く違うところに行けば、そんなに肩身の狭い思いをしなくても済んだはずです。それをあえて今の嫁ぎ先を選んだ理由があるはずです。そこで、事例一の田中さんと同じように、今回の人生の計画を立てている場面へと誘導しました。

私 「あなたはなぜ、前世の友人のところにお嫁にいこうと決めたの?」

川口「前世であんなことしてしまったから、罪滅ぼしをしたかったんです。」

私 「しかしそこに行くと、肩身の狭い思いをするということはわかっていたよね。」

川口「はい。わかっていました。」

私 「それでもそこを選んだんだ。しかしあなた一人が選んでも、嫁ぎ先の家族の許可がなければそこにはいけないよね。では、嫁ぎ先の家族と、あなたの魂が話し合いをしている場面へと行こう。あなたはそこで、皆さんとどんな話し合いをしましたか?」

川口「前世であんなことをしたから、罪滅ぼしをさせて下さいと皆さんにお願いをしました。」


私 「そうなんだ。皆さんはどうしてますか?」

川口「みんなとても優しそうな顔をしています」(涙)


私 「そうだよね。皆さんはあなたに何か言ってますか?」

川口「あなたがそれで気が済むならば、そうしなさいと言ってくれてます。」(号泣)


私 「最初から、みんなあなたのこと許してくれてたんだ。そうでなければ、あなたのことを家族にはしていないものね。」

川口「そうでした。初めから許してくれてました。」(涙)


彼女の今回の結婚の大きな目的は「罪滅し」でした。それが、彼女の「すみません」の原因でした。

しかし、ご主人の家族は、「それであなたが楽になるならば」と、全てを分かった上で受け入れてくれていたのです。大本の原因がわかり、魂レベルの癒しをすることで、彼女の罪悪感がなくなり、心から安心することができたようです。


数日後、彼女からメールが来ました。

「先日は本当にありがとうございました。まさか私が前世であんなことをしていたとは思ってもいませんでした。しかし、思い出してみると、とても説得力があります。現に、とても楽になっています。

セッションの翌日に、朝いつものように、主人と子供たちと、お義父さんのお弁当を作っていたら、お義母さんが横に来て『あなたのお弁当はいつもおいしそうね』と褒めてくれたんです。

びっくりしました。今までそんなことありませんでした。もしかしたら、褒めてくれていたのに、気づいてなかっただけなのかもしれないとも思いました。とても嬉しくて、素直に『ありがとうございます』と言えました。以前ならば、嫌みを言われているように受け止めていたんじゃないかと思います。

そういえば『すみません』の口癖も、気が付くとなくなっているようです。さっき、試しに『すみません』とつぶやいてみたのですが、とても違和感があって、『謝る必要なんかないのに』という感じでした。

本当に楽になりました。肩こりもとても軽くなっています。今まで緊張していたんだなということがよくわかります。

また何かあったらお願いしようと思います。本当にありがとうございました。」

ご主人やお義母さんは、罪悪感にさいなまれている彼女を、嫁として迎えてくれていたのです。そして、ちょっとした嫌みを言うことで、彼女の中の罪悪感の製造工場をつついてくれていたのです。

「あなたはいつまでその罪悪感を持っておくの。それを持ったままだときついでしょう?」と教えてくれていたのです。彼女はそれに気づくことができました。そして、自分を苦しめていた罪悪感を手放すことができたのです。

彼女は今まで、周りから○をもらうこと、許してもらうことに専念をしていました。ましてや×をつけられることは、とんでもないことでした。そうでなければ、自分には存在価値はないという強い思い込みが根底にあったのです。その原因から解放され、彼女はとても楽になったようです。

彼女の場合は、少し特殊な事例ですが、そこまではないにしろ、多くの方が自分は誰かに認めてもらうなり許してもらうことで、〇をもらわなくてはいけない、という思い込みを持っているようです。




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